少年野球~高校野球 野球少年の親と指導者のブログ

少年野球~もうウチの子を交代させてよ~

3番ショート。

その彼は低学年の頃から所謂【中心選手】でした。

彼はいい選手でした

当時は30名近くいる大所帯でしたが・・

彼は自分の技術や立場を自慢することもなく

常にチームの事を考え・・

下級生の面倒見もいい選手でした。

下級生だけでなく・・

スタメンの選手ではないベンチプレーヤーの選手にも

『いつもいい声ありがとう!お前の声で打てたわ!』

『前の打席でどこに打ったか教えてくれてありがとうな!』

そんな声を掛けてあげられる選手でした。

周りの選手からも信頼が厚い選手でした。

彼のお母さまは根はいい人なのですが・・

少々熱くなりすぎることがあるお母さんでした。

『うちの子ががんばっているんだからみんなの子供もがんばらせて!』

こんな風に周りが見えない発言をするお母さんでした。

エラーをした彼に母は・・

ある公式戦で・・

珍しく彼が初回にエラーを2つ。

『全く、あの子は何してんのよ』

とお母さん。

3回にまたエラー。

『今日はあの子はもうダメね』

またお母さんの声が聞こえてきます。

1試合で3つのエラー。

今までにしたことない経験に彼も顔色が変わっているのがわかります。

タイムをかけて

『頭の中で考えるな。考え出すと悩むから体だけ反応させればいいから』

そう彼に伝えました。

他の選手も

『大丈夫。大丈夫。いつも通り行こう!』

『笑顔消えてんぞ!』

そんな言葉を彼にかけてくれていました。

ベンチに戻ろうとした時・・

あのお母さんの声が耳に入ってきました。

『ああ!もう今日のあの子は無理だって・・ウチの子を交代させてよ』

気持ちはわからなくもありません。

お母さんは続けて

『もうこれなら〇〇君のほうがまし。〇〇と交代さえればいいのに』

2枚目のショートの選手の名前を出してこう言いました。

ゲームは彼もそこから立ち直りノーエラーで勝利しました。

親が熱くなりすぎると・・

試合終了後・・

婦人部長に言ってあのお母さんを呼びました。

『あの・・何か悪いことしましたか・・』

そう言っているお母さんに僕はこう言いました。

『お母さん・・熱い気持ちになってしまうのもわかります。ですが・・交代させるかどうかは僕の役目です。お母さんが言うことではありません。一時のプレーで母親だけの感情で物を言うのは止めてください』

と言うと

『すみませんでした・・つい熱くなってしまって・・』

そう頭を下げるお母さんに

『今日もたくさんのお母さんが試合を見に来てくれています。ベンチの選手のお母さんもたくさんいます。【ウチの子交代させてほしい】という発言をベンチの選手のお母さんはどういう思いで聞いていたか想像つきませんか?』

『息子さんは一人で野球をやっているわけじゃありません。今日もエラーをした後に立ち直ったのは周りの選手の声があったからだと思います。そしてそれは普段から息子さんが周りをよく見ている選手だからそういう声を掛けてもらえるんですよ』

そうお話させていただきました。

『すみませんでした・・私・・周りが見えていませんでした』

そのお母さんはそう言ってくれました。

親が熱くなりすぎると・・

周りが見えなくなる時があります。

自分では何気ないと思っている一言が・・

周りの人間を傷つけることもあります。

野球をやっているのは子供ですから・・

~年中夢球~

この記事を書いた人
野球少年を持つ親御さんと指導者の皆様へ元気を送り続ける[年中夢球]です。 神奈川野球雑誌『ОNEDREAM』に連載中。