皆さんのチームにもよく涙を流してしまう選手はいませんか?
私は試合に負けた涙は我慢することなく思いっきり泣いていいと彼等に話しています。
練習がきつかったり…
監督やコーチに叱られたり…
そういう時に流す涙は強さを求めるために子供にはがんばってほしいと思います。
しかし、子供にしてみればこの『泣く』ということを我慢することも難しかったりします。
『泣くな』
と言うと余計に泣いたりしてしまう子供もいます。
泣くのを我慢していても涙は勝手に出てきてしまいますから。
うちを卒団した選手にもよく涙を流す選手がいました。
コーチに注意されては涙を流し…
ノックの球を捕れなくて涙を流し…
打てなくては涙を流し…
週末に1回は彼の涙を見ていたような気がします。
そんな彼を見て
『泣くな!』
と声を大きくして注意するコーチもいましたが彼の涙は止まる事はありませんでした。
そんな彼にこう言った事があります。
『涙が勝手に出ちゃうのは仕方ない。だけど心の中で泣かないようにとお前が思う事も大切だよ。泣くことに対して俺は怒ることはしないけど泣かないようにする気持ちは持とう』
その後も彼は涙を流し続けました。
ですが・・
泣いている最中に何度か堪えようとする顔が見られるように変化が出てきました。
この子も自分と戦っていたのでしょう。
彼のお母さんは
『泣き虫で本当にすみません。どうしてあんななんだか・・迷惑ばかりかけてすみません』
そうよく話していました。
彼が恵まれていたのはこの子の事を他の選手が誰も馬鹿にしなかった事です。
みんなが声を掛けたり・・
頭をポンポンとたたいたり・・
肩を寄せ合ったり・・
みんなが彼に優しく接していました。
お母さんも
『本当にチームの皆に助けてもらって・・試合に出られなくても本当に幸せです。いつかあの子も皆のように優しくそして強くなって欲しいです』
そう涙を流しながら話してくれた事を覚えています。
彼の涙を流す回数は最上級生になってからはずいぶん減ってきましたが・・
それでもやっぱりよく泣いていました。
そして・・
彼等の年代の最後の大会。
仲の良かったこの年代は一試合でも多く仲間と野球をしたい・・
そういう想いが強いチームでした。
そして
『最後は笑顔で終わろう』
そう彼等は約束し合っていました。
しかし・・
三回戦で彼等の願いは途絶えました。
試合終了後、笑顔で終わろうというあの約束はそこにはありませんでした。
言葉を失い・・
泣き崩れる選手達。
重い空気が流れていたその時でした・・
『笑顔で終わろうよ!そう約束したじゃん!』
そう言ったのはあの彼でした。
精一杯作った笑顔。
ですが・・
彼の眼にも…
やっぱり涙は光っていました。
『お前だって泣いてんじゃんかよ』
『お前に言われるとはなあ』
そんな事を話す選手たちに笑顔が戻ってきました。
ずっと泣き続けてきた彼。
リトルリーグの最後に流した涙は涙こそ溢れていましたが笑顔でした。
その姿を見て涙を流していたお母さんに
『息子さん。。強くなって優しくなりましたね』
そう話すとお母さんは声にならずに何度もうなずきながら涙を流しました。
流し続けてきた涙が彼を強くしたのだと思います。
『泣く』という漢字には『立つ』という漢字が・・
『涙』という漢字には『戻る』という漢字か・・
泣くたびに・・
彼は立ち上がり・・
涙を流す度に・・
彼は泣く前の自分より少し強くなって自分に戻っていったのでしょう。
~年中夢球~