彼のお母様は美容師でお父様は土日もお仕事の方でした。
彼が入団してくれる時にお母様が
『二人とも土日が仕事でほとんど来れないのですがそれでもよろしいでしょうか?』
と何度も申し訳なさそうにおっしゃるので
『全然問題ありませんよ。このチームを選んでくれてありがとうございます』
そうお伝えしました。
試合や練習は見に来ることは出来ませんでしたが
飲み会や祝勝会には顔を出してくれました。
その時も、必ず
『皆様にお任せばかりで本当に申し訳ありません』
『何もお手伝いをしなくて本当に申し訳ございません。』
ご夫婦は他の保護者の方にこうやっていつも頭を下げていました。
ある飲み会の時にチームの一人のお父さんが頭を下げている子のご夫婦にこう言ってくれました。
『謝る必要なんかないよ。子供も親も一緒のチームの仲間なんだからさ!本間コーチが子供達に仲間を大切にしろっていつも言っているのに俺達大人が仲間を大切にしなかったら子供に示しがつかねえしな!それに・・俺達が本間コーチに怒られちまうよ』
そう言って大きな声で笑っていました。
『でもさ・・見たいよね。息子の野球・・。仕事は仕方ないけどアイツの野球をやっている姿1回見させてやりてえなあ』
と別のお父さんがこう話していました。
彼は6年生になりチームの中心選手として活躍していきました。
最後の大会の時にお父様とお母様がなんとか仕事の都合をつけて見に来てくださることになりました。
『お前、緊張しちゃうんじゃないの??』
周りの選手にそう言われて嬉しそうにしている彼の姿がありました。
試合は敗れ・・
彼は2つのエラーと3三振という結果でした。
試合後に泣きじゃくっている彼達が少し落ち着き6年生の親御さんに全員の前で話をしてもらいました。
彼のお母さんは涙を何度もぬぐいながらこう話してくれました。
『私たち夫婦は今日初めて試合を観ました。家では見たことがない笑顔や泣き顔。仲間に声を掛ける姿。仲間に声を掛けてもらう姿。どれも初めて見る姿で本当にいいチームで野球をさせて頂いたと感じました。そして、グラウンドにはこの子の親をしてくている人がたくさんいることも・・本当に皆さんありがとうございました』
そう言って深く深く頭を下げていました。
結果はいい結果ではなかったかもしれませんが
子供の笑顔や仲間に声を掛ける姿を見てご両親は幸せだったのだと思います。
時に野球に来られない親御さんを責めるケースを見受けます。
しかし・・
このご夫婦のように観に行けなくてもいけない親御さんもいらっしゃいます。
仕事を休んでも来い・・
そんなバカな話があるでしょうか?
行かないと行けないは違います。
野球に毎回顔を出すことも立派な応援だと思いますが
このご夫婦のように野球に観に行けなくても
子供のために土日仕事をしているのも立派な応援だと思います。
~年中夢球~