技術が上手い子もいれば・・
今はまだ技術が追い付いていない子もいます。
僕はチームの選手に言ってきたことは
『上手いとか下手ではなく一生懸命やっているかいないかが大事なことだ』
と伝えてきました。
ある選手が私のチームに移籍してきました。
野球の技術はいいものを持っている選手でしたが・・
入団してからも・・
人を上から見るような態度が気になっていました。
彼が入団してから1ヶ月くらいしたころです。
ウチのチームでなかなか上達しない子にノックを打っているときに・・
その彼がニヤニヤしているのが目に入りました。
ノックを受けている選手がエラーをするたびに・・
ニヤニヤしています。
ノックを打つ手を止め
『何か面白い事あるか?』
そう尋ねました。
『いや・・あまりにも・・』
そう彼が言ったので
『あまりにも・・なんだ?』
と聞くと・・
『いや・・あの・・』
言葉はごまかしましたが・・
言いたいことはわかりました。
『一度グラウンドから出て外からウチがどういうチームなのかを見てくれ』
そう彼に伝えました。
グラウンドではまだあの彼がノックを受けています。
なかなか捕れないけれど・・
必死に・・
歯を食いしばってがんばっています。
その彼に声を掛ける仲間・・
『次は捕れるぞ!』
『いい声出てるぞ!』
グラウンドの外にいる彼にこう話しました。
『君の前のチームがどういうチームだったのかはわからない。でも一生懸命やっている選手を馬鹿にすることを絶対にやってはいけない。少なくともうちのチームにはそういうやつは一人もいない』
彼はずっとノックを受けている子と声を出してその選手を盛り上げている仲間の姿をじっと見ていました。
『でもな・・手抜いてやるとウチのチームはすげー言われるぞ』
そう笑いながら彼に話しました。
グラウンドの中ではあの彼のノックが終わったところでした。
ドロドロになったユニフォーム。
足元がフラフラになっている彼に水筒を持ってきてあげる仲間。
トンボをかけるチームメイト。
彼はその光景をじっと見ています。
『よし・・次・・君の番な』
そう言うと
『えっ・・僕ですか』
とびっくりした声で返事が返ってきました。
『実際にさ、ノック受けながらあいつらの声聞いてみん。それが一番わかるよ』
入団して1ヶ月で個人ノックはちょっと早いかなと思いましたが・・
この子にはいいタイミングだったと思います。
ノックの途中から・・
足が動かなくなり・・
声も出なくなってきました。
『おい!こっからだぞ!こっから!がんばれ!』
『黙ると余計につらいぞ!声出したほうが楽だぞ!』
『本間コーチこの辺からバテテくるから楽だぞ!』
そんな声が彼に飛びます。
その中には彼に笑われていたあの選手も・・
必死に声を出して盛り上げています。
ノックが終わった後・・
彼を中心に笑顔の輪が出来ていました。
彼が本当の意味で入団した日になりました。
~年中夢球~