私の大切な教え子の話です。
とても・・
不器用ですが一生懸命野球をする子でした。
彼はとても熱心に練習をする選手で
自主練も手を抜かず一生懸命練習をする子でした。
ですが・・
不器用な選手で
指導したことが頭に入るまでまず時間がかかる選手で
その後に体がそれを覚えるまで
また時間がかかる選手でした。
色々な選手がいます。
一度・・
指導するとそれをすぐに理解する選手もいれば
彼のように体がわかるまで何度も何度も反復を繰り返し
自分のものにする選手もいます。
指導者であれば当然『早く上達してほしい』と思うものです。
しかし・・
大切なことは一生懸命がんばることであり
そこにある程度の個人差が出てくることは仕方がない事です。
彼はなかなかレギュラーを取ることが出来ませんでしたが
ともかく必死に野球に打ち込む子でした。
僕はそんな彼に
『必ず実を結ぶ時が来るから。自分ではなかなかわからないかもしれないけれど確実に技術も上達しているぞ』
そうよく声を掛けていました。
彼は少年野球では残念なが らレギュラーを取ることが出来ませんでした。
それでも卒団式で
『必ず高校野球までやり遂げてレギュラーを取ります』
そう言って中学はクラブチームに進みました。
中学2年の時に
彼から話があるのでグラウンドに行きたい・・
そう連絡がありました。
卒団した選手からのいきなりの連絡・・
嫌な報告が多いことがあります。
野球を辞めたい・・
あんなに野球にひたむきだった彼が・・
そんな思いが頭 を巡らせました。
1年ぶりにグラウンドに戻ってきた彼。
『お前、グローブ持ってきたか?』
そう私が聞くと
『いえ・・』
と答える彼。
そして・・
クラブチームに進んだものの
上には上がいることを痛感し
自信がなくなり
野球を辞めたい・・・。
ポツリポツリ・・
僕と目を合わせることなく彼は話してくれました。
そして・・
『本間さん・・』
と僕の名前を呼んだ時に彼は僕の眼を初めて見てこういいました。
『自分・・やっぱりセンスないんですよ』
と力ない言葉と力のない視線で僕にそう言いました。
『センスか・・。お前さリトルの時と今と・・どっちががんばってる?』
と聞くと
『リトルの時のほうがやってました』
と彼は答えました。
『センスがない・・。そう言い切れるまでお前は練習してないんじゃないか。センスがあるないで野球を続けるか辞めるかっていうのは俺は違うと思う。野球まだ好きなんだろ?そこじゃないのか?野球を続けるか辞めるかっていうのは・・』
そう言うと
『野球は好きです』
と彼は答えてくれました。
『グローブ・・持って来いよ。』
と彼に言うと
『えっ?』
と驚くような顔をしていたので
『えっ?じゃねえよ。グローブないと野球出来ねえだろ。今日は一日ここにいて練習に付き合え』
笑いながらそう彼に言いました。
練習中に後輩と楽しそうに話しながら野球をしている彼。
練習後・・
『いやーやっぱ野球は楽しいです』
そう笑顔で言った彼は
野球を続け高校野球の最後の夏では4番バッターとして
高校野球を終えました。
なかなか上手くならない・・
少年野球で不器用な我が子を見て
そう感じる親御さんもいらっしゃると思います。
不器用でも・・
なかなか目に見えて野球が上達しなくても・・
野球が好き。
その気持ちが一番大切であり
一日でも長く野球をしてくれることであることを
忘れないでください。
~年中夢球~