球は速いのにストライクが入らない・・
練習ではストライクが入るのに試合だと入らない・・
皆さんのチームにもこういうピッチャーの子はいないでしょうか?
以前ウチのチームにもこういうピッチャーがいました。
ともかく球が速い。
ブルペンではそこそこストライクが入るのですが・・
試合になるとビックリぐらいにストライクが入りません。
私もまだ指導経験も浅い時でこの子試行錯誤している状態でした。
指導者であればフォアボールが一番嫌なものです。
先頭バッターへのフォアボール。
2アウトからのフォアボール。
そんな思いから
『先頭にフォアボールだけは出すなよ』
『打たれるのはいいからフォアボールだけは出すなよ』
そんな言葉をよく掛けていました。
私だけでなく周りの選手も・・。
ですが・・
彼は変わることなく試合の度にフォアボールを連発していました。
きっと私の言葉からフォアボール・・
という言葉がたくさん出てくるので・・
彼は余計にフォアボールが頭の中に残ってしまったのだと思います。
そこで他のコーチと話し合いをしました。
『あんだけ球が速いならストライク入れば絶対に打たれないのに』
そんな声がコーチの間から出てきました。
そうなんです。
それぐらいの球の速さでした。
『今度はフォアボールという言葉を一切言うのやめてみましょう』
という案が出たので試してみました。
他の選手にもそのことを伝え何試合かやってみましたが・・
何とも言えない空気感になり・・
彼は変わることはありませんでした。
それどころかストライクを入れようとして・・
ボールを置きに行くことが多くなり・・
彼の一番の武器であるスピードもなくなってきてしまいました。
彼とも何回か話をしました。
『フォアボールばっかり出してチームのみんなに申し訳ない』
彼はそう言いました。
『マウンドで何考えてる?』
私が聞くと
『思わないようにしてるんですけどまたフォアボール出しちゃうかなって思います。初球がボールになったら余計考えてしまいます』
彼はそう答えました。
『打たれてもいいぞって・・俺も他の選手もみんな言ってんだから開き直って投げたらどうだ?』
と私が言うと・・ちょっと考えてから・・
『打たれるのは嫌なんですよ』
そう笑って彼は答えてくれました。
それを聞いて・・
ハッとしたんですよね。
フォアボールのことばかりが先行してしまって・・
バッターと勝負しているということが・・
僕の中でも後の方になってしまっていたんだと思います。
そこで選手全員を集めました。
そして・・
『次の試合・・フォアボール何個出してもいい。最後まで絶対代えない。ただし・・ヒットを絶対打たれんなよ。バッターと勝負して来い』
ピッチャーの彼にこう言いました。
そして・・
『ヒットを打たれないように全員で守ってやれ。その代わりフォアボールは何個でもオッケーだと声を掛けてやってくれ。それと打たれるのはいいぞも禁止な。打たれたくないらしいから(笑)』
そう選手全員に伝えると・・
『なんかおもしろくなりそうだな!』
『うわーコイツ、フォアボール何個出すんだろ!』
全員が笑顔になっていました。
試合当日・・
初回から
『絶対に打たれない』
という気持ちが全身から溢れるぐらいの闘志で投げていました。
初回・・
何とフォアボール0。
2回にフォアボールを2つ出すと・・
『おっ来たな!2つめ!』
『ヒットだけは打たれないように守ってやんぞ!』
そんな声が内野からピッチャーの彼に笑顔で飛びます。
出したフォアボールは全部で5つ・・
最終回にヒットを1本打たれてしまいましたが
堂々の勝ち投手になりました。
バッターと勝負するはずが・・
いつの間にか・・
フォアボールを出さないこととこの選手は戦っていたのだと思います。
というより・・
僕がそうさせてしまっていたのだと思います。
もちろん技術的な練習も必要です。
ですが・・
ちょっとした言葉のきっかけで子供は変わります。
そのきっかけを見つけてあげることが・・
指導者の重要な役目でもあると思っています。
~年中夢球~