私はノックを右と左で打ちます。
時々
『本間さん…スイッチヒッターだったんですね』
と言われることがありますが…私は右打ちです。
大事な公式戦で…
1点リードのまま最終回へ。
ノーアウト2・3塁のピンチから三振と内野フライでバッターを打ち取りツーアウトまで何とか持ってきました。
相手バッターは2番の左バッターの選手。
今日の打席は全てセンターから逆方向のレフト側の打球。
選手も理解しているだろうと思いましたが確認のためタイムを取ってマウンドに選手を集めました。
内野の守備体型を確認してバッテリーにも攻めかたの確認。
選手の皆も・・
『大丈夫です。わかっています』
そう答えてくれました。
外野手を見ると…
センターは左中間にシフトを取り…
レフトはライン際に守備位置を変えていました。
『よし…外野手もわかっている。大丈夫だ。』
そう思ってベンチに戻りました。
試合再開後…
初球は三塁方向へのファウル。
2球目はボール。
3球目はまた三塁方向へのファウル。
『このバッターは逆方向にしか打てない』
僕はそう確信しました。
選手達も確信したのでしょう。
『逆方向行くぞ!』
『レフト!ポテンあるぞ!』
選手間同士で声が飛び交います。
次の投球…
レフト線へライナーの打球が飛びました。
当たりを見て一瞬ドキッとしましたが
守備位置をライン際に変えていたレフトのほぼ正面に。
『よし。』
心の中でそう私はつぶやきました。
打球は左バッター特有のスライスの打球となりレフトの選手がその打球に合わせようとしていました。
どんどん打球はライン際へ…
『大丈夫だろう』
とおもっていましたがレフトの選手の想像以上に球は切れ…
グローブの先にボールが当たり捕ることが出来ませんでした。
結果…サヨナラ負けとなり大事な公式戦を落としてしまいました。
レフトの選手は試合後も泣き崩れたままでした。
試合後のコーチ同士のミーティング。
『あれ捕れましたよね』
『あいつはメンタル弱いからなあ』
そんな言葉が聞こえてきました。
確かに捕れない打球ではなかった…
僕もそう思っていました。
家に帰り…
風呂から出て…
私は1人の時間を作ります。
今日の試合を時間が少し経ってから振り返りたいからです。
ノートとボールペンを持ち今日の試合を1回から振り返ります。
そして…
最終回のあの場面。
レフト。
左バッター。
タイムの確認。
配球。
逆方向。
シフト。
こうノートに書きました。
ここまでは上手くいっていたはず。
続けて…
スライス。
この言葉を書いてしばらく考えました。
あのレフトの選手にあんな思いをもうさせたくない…
やっぱり練習あるのみだな…
そう思い…
スライスの下に【練習】とノートに書き込みました。
スライス。
練習。
この2つの言葉を見た時…
ハッとしたのです。
左バッターのライナーのスライスのノックを練習で打っていないことに気が付きました。
その当時はコーチに左バッターしかおらず打つノックは全部右バッターのノックしか打っていないのです。
レフトの選手にすれば練習していないボールだったはずです。
申し訳ないことをした…。
次の日から…
練習の合間を見て左のノックをずっと練習してきました。
練習で試合と同じ状況をなるべく作ることも指導者として必要です。
又・・
子供達にがんばってもらうのであれば・・
指導者自身もがんばらなくてはいけないことがあると教えてくれた試合でした。
~年中夢球~