最後の背番号を縫う母親の気持ち・・
願いを込める気持ち・・
そして・・。
最後の背番号を縫う時がやってきた。
今まで何度も縫ってきた背番号。
時には背番号をもらえない時もあったし…
野球から離れそうになった時もあった。
高校3年の夏。
先輩母から聞いていたように…
この夏だけは…
【来てしまう夏】だ。
もうすぐ開会式。
開会式の始まりは終わりが近づいていることを意味している。
息子のユニフォーム姿を見ることも…
終わりが近づいている。
私は背番号を縫う時に…
必ず大安の日を選んできた。
少年野球の先輩の母から教えてもらってからずっとそれは変わらない。
悪いことが起きないように…
怪我をしないように…
悔いが残らないように…
背番号を縫う時にたくさんの願いを込めてきた。
背番号を縫っている時間は…
私にとって息子と会話している時間。
裁縫は得意ではないけれど…
私はこの時間が好きだった。
一針一針に願いを込めて…
一針入魂で背番号を縫ってきた。
息子の最後の背番号を縫う日がやってきた。
もちろん大安の日。
全ての家事を終え…
ユニフォームと背番号を見つめる。
直ぐには縫うことが出来なかった。
これを縫い終えると…
本当に終わりが近づいていることを実感してしまうから。
しばらく…
ユニフォームと背番号を見つめる時間が続いた。
少年野球の時と比べると大きくなったユニフォーム。
息子は野球を通して心も体も大きく成長した。
最後の背番号を縫う。
色々なことが自然に思い出されてくる。
少年野球…
中学野球…
高校野球。
辛いことも楽しいことも…
今まで忘れていたようなことも頭の中に出てくる。
背番号を縫っている途中から…
涙が込み上げてきた。
終わってしまう涙なのか…
幸せの涙なのか…
自分にもよくわからない。
最後の糸を切る時が来た。
『今までたくさんの幸せをありがとう』
そう言葉に出して私は最後の糸を切った。
そして高校野球最後の日に・・
この言葉を直接息子に言おう・・。
そう私は決めた。
~年中夢球~