『笑ってなんぼだよ』
母はいつもそう言って息子に語りかけました。
彼が野球を始めたのは小学校2年生の時。
初めは楽しくて仕方がない野球がだんだん辛いものに変わっていきました。
彼は何度も『野球を辞めたい』そうお母さんに伝えたそうです。
ですが母は毎週彼をグラウンドに連れていきました。
車の中でも
『笑ってなんぼだよ。楽しんだもんがちだよ』
母は口癖であるその言葉を彼に話していました。
でも・・
『もう笑えないんだ』
彼はそう話しました。
野球を辞めたい。
我が子がそう言った時にそれが一時のものなのか・・
本当にもう野球が嫌いになったのかを判断することは非常に難しい事です。
そして、その時の親の行動も・・
このお母様のように毎週グラウンドに連れていくことが正解なのかもしれませんし・・
少し時間を空くことが正解なのかもしれません。
彼は野球の日の朝・・
必ず自らユニフォームに着替えたそうです。
本当に野球が嫌いなら・・
ユニフォームに着替えないのではないかと・・
母は信じていました。
でも・・
お母様も送りに行く車の中で
『笑ってなんぼだよ!楽しんだもんだ勝ちだよ!』
そう我が子に言いながら子供に見つからないように涙していました。
夏は熱中症になってしまう事が多かったりグラウンドに行っても練習できない日が続きました。
その時に彼はスタメンの座を取られてしまいました。
その日に彼は泣きながら
『新しいグローブを買って欲しい』
とお母様に頼んだそうです。
これを機に彼は
『野球に行きたくない』
と一切言わなくなったそうです。
悔しさが彼を変える『野球スイッチ』になったのでしょう。
少年野球が終わり・・
彼は中学で野球を続けるかどうか悩んでいました。
お母様は
『もう自分で自分の道を決めなさい。ただ・・私があなたを野球に嫌いにさせてしまったのならごめんね』
そう彼に話したそうです。
彼は・・
中学でも野球の道を選びました。
今では誰よりも早く笑顔でグラウンドに行く選手になりました。
『笑ってなんぼだよ』
という母の教えはきっとこれからの彼の心にずっと生き続けていくでしょう。
彼の名前は【暖 だん】君。
母の暖かさを知った暖君は・・
その暖かい心で仲間の気持ちがわかる選手になるでしょう。
*写真は暖君からお母様に送った手紙です。
~年中夢球~