引退試合…
ついにこの日がやってきてしまいました。
2年生の春にはメンバーに選ばれたあなた。
でも…
私が背番号を縫えたのはこの1回と…
この引退試合。
心ではわかっているけど…
最後の夏にメンバーに入れなかったことを受け入れられない母でした。
切なくて…
悔しくて…
引退試合の背番号を縫っている時…
背番号に涙が落ちてきました。
引退試合…
私は正直観に行かないつもりでした。
あなたの姿を観るのが辛いから。
試合当日の朝…
『お母さん…思っていたより早く高校野球の終わりが来ちゃったけど今日がんばるから…じゃあ後でね』
そう笑顔で私に言ったあなたを見て…
球場に行くことを決めました。
スタンドにはいつも試合に出ている選手が応援に…
マネージャーがこの日のために作ってくれた御守り…
そして…
グラウンドにはあなたの姿。
少年野球からずっとあなたと追いかけてきた『甲子園』という夢。
それが…
今日で終わるかと思うと…
また涙が出てきました。
試合が始まると…
私と同じ立場の親御さんがみんな泣いています。
それぞれの選手に…
それぞれの親御さんに…
ドラマがあったのでしょう。
少年野球の時に優勝したこと…
中学で野球を辞めたいと泣きながら私に言ってきたこと…
色々なことが頭のなかを巡っていました。
8回…
あなたは代打で登場。
これが高校野球最後の打席…
この眼に焼き付けようとしたけれど…
レギュラーの選手達の応援。
その中には泣きながら我が子に声援を送る選手も…
そして一緒の時間を過ごしてきた親御さんも泣きながら応援してくれている。
眼に焼き付けたいけど…
涙が溢れ出して…
あなたの最後の打席は…
ショートゴロで終わりました。
ヘッドスライディングしたあなたの顔は笑顔が…
やりきったんだね…
野球を。
悔いなく終われたんだね…
野球を。
全てが終わった…
そう思っていました。
試合が終わりレギュラー選手が球場の外で迎えてくれました。
揉みくちゃになりながら…
抱き合い…
涙を流している姿。
本当に終わってしまったんだな…
そう思っている時…
息子が今日の選手の代表として挨拶を始めました。
『皆さん。本当に今日はありがとうございました。今日の引退試合で僕たちは終わりではありません。ここからです。ここからメンバーをサポートする本当の戦いの始まりです。お父さん、お母さん…だから、今日はまだありがとうございましたは言いません。メンバーの夏が終わる時まで…その(ありがとうございました)は甲子園で言える夏にします』
この息子の言葉で…
私の今までの悔しさや切なさにピリオドが打たれました。
まだ終わりじゃなくて・・
始まり。
メンバーを全力でサポートする息子を…
私も全力でサポートする夏にします。
まだ終わりじゃなくて・・
これから始まる夏。
幼い頃から一緒に追いかけてきた『甲子園』の夢。
息子のお陰で・・
息子のあの言葉で・・
まだ夢を追いかけられます。
ありがとうね・・息子。
ありがとう・・野球。
~年中夢球~