『野球を辞めたい』
多くの親御さんがお子さんからこの言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?
まだ言われたことがない親御さんも、いつこの言葉を聞くことになるかわかりません。
私の子供も中学のシニアに入団して
『野球を辞めたい』
と私に言ってきたことがあります。
理由を聞くとチームメイトとうまくいっていない、野球が面白くない・・と。
私が、まず最初に彼に確かめたのは
『野球以外に何かやりたいものが見つかったのか?』
ということでした。
野球が出来る体を持っていることは当たり前ではない・・
そうでないことを確かめた上で彼に話したことは二つ。
『お前は野球が出来る体を持っている。まずはそれが当たり前じゃないということ。世の中には野球がしたくても、甲子園を目指したくても体が不自由だったり、怪我で野球を断念せざる選択しか出来なかった人もいる。野球が出来る健康な体を持っていることは当たり前ではないということ。』
『二つめは、お前が野球を辞めるのならば、リトルの監督に野球を辞めることを伝えに行かなければならない。お前が野球を辞めるということはお前の野球に携わった人に報告しなければいけない』
じっと話を聞いていた彼は、その後も野球を続けました。
私の教え子にJという選手がいました。
彼は1年間グラウンドに来ることが出来ませんでした。
グラウンド前までは来ても、グラウンドに入れない・・
そんな1年間でした。
でも、チームは辞めたくない・・
その1年間、父はスタッフとして、毎週、グラウンドに来ていました。
母も1年間、当番をやり続けました。
グラウンドに我が子はいません。
『もう辞めさせてください。皆さんに迷惑をかけたくない』
ある日お父さんとお母さんがそう言ってきたことがあります。
もうお父さんもお母さんも限界だったのだと思います。
『迷惑だなんて思ってる人間はウチにはいないよ。チームを辞めたくないっていうんだから、野球が好きの証拠。待とう』
と親御さんに伝えました。
1年間、かかりましたがJは毎週、グラウンドに来れるようになりました。
結局、原因はなんだったのかわかりませんが父や母の姿をきっと見ていたのだと思います。
今、彼は高校3年生になり野球の中心選手と活躍しています。
この二人は野球を続けて良かったと思っているでしょう。
そして、今度は逆のケースです。
リトルの中心選手で中学は強豪クラブチームに行ったTから連絡が来て相談があると・・
彼は、週末は野球チーム、平日は陸上部に在籍していました。
『本間コーチ、野球好きなんですけど、陸上がそれ以上に好きになってしまいました。なので、野球を辞めて陸上一本でがんばりたいです。野球教えてくれてありがとうございました。』
と・・
この子は、野球以上に好きなものを見つけたんですよね。
『おおそうか。ちょっぴり残念だけど、俺は野球をしているお前じゃなくても、応援してるからな!』
と握手をして別れました。
数年後…
彼から
『本間コーチ、箱根駅伝を走ることになりました。見に来てください』
と連絡が来ました。
お正月、彼の走る姿を見ました。
野球を辞めると一言に言っても様々なパターンがあります。
一時のものなのか、野球以外に夢中になるものを見つけたのか・・
それをその時に判断することはとても難しいのだと思います。
野球を続けるにしても・・
辞めて他のスポーツを続けるにしても、その道でがんばることが選んだ道が正しかったという証明になるのだと思っています。
そして・・
親と指導者は、それが、野球であろうと違う道であろうとも、子供が決めたことを応援していくことが大切なはずです。
~年中夢球 photo buchiko~