野球というスポーツは感動を与える反面、時に残酷な結果をもたらすことがあります。
大逆転勝ちしたチームの陰には大逆転負けを喫したチームがいます。
サヨナラ負けをしてしまったエラー。
最後のバッターで手が出ず見逃してしまった三振。
そして、その選手にはそれぞれの親御さんがいるわけで親御さんも苦しみを共にします。
私の教え子で高校1年生からレギュラーになった選手がいました。
リトルでも中学のクラブチームでも中心選手で高校野球も1年生からその実力を発揮していました。
そんな彼の活躍を楽しみにしていました。
1年生の夏の大会で・・
彼は先発で起用されていました。
試合は同点のまま最終回へ・・
ツーアウト3塁の場面・・
彼のエラーによって試合の幕が下りました。
その場から動けず先輩の肩を借りて整列していた彼の姿を鮮明に覚えています。
先輩の最後の夏を自分のエラーで終えてしまった・・
きっと彼はそう思っていたのでしょう。
新チームの練習に彼の姿はありませんでした。
親御さんから
『あの子が家から一歩も出ない』
と連絡をもらいました。
彼にとっては今まで生きてきた中で一番の挫折だったはずです。
彼に会いに行き
『ここで野球を辞めたらお前はずっと野球を嫌いなまま一生を過ごすことになるんじゃないか?この挫折は野球で乗り越えることしかできないんじゃないか?』
こう話しました。
涙を流しながら彼は
『先輩に申し訳ないです・・』
そう話しました。
『お前が野球を続けることを先輩も望んでいるはずだ』
そう言って彼と別れました。
それから数日後・・
彼の親御さんから
『あの子が練習に行きました。本当にありがとうございます』
そう連絡をもらいました。
親御さんも苦しかったのだと思います。
また野球に戻ってきてくれて良かった・・
そう思っていました。
数か月経って・・
彼がリトルのグラウンドにやってきました。
『どうした?』
そう聞くと・・
チームには戻ったけど試合には全く出られなくなってしまったこと。
その間に肘を故障してしばらくは治療が必要なこと。
また彼に試練がやってきました。
リトルや中学で中心選手でやってきた選手はこういう挫折にもろいケースがあります。
そして、彼は
『もう落ちる所まで落ちましたよ』
悲しそうに作った笑顔でそう言いました。
『そうか・・落ちる所まで落ちたか・・じゃあ、やっと地に足が着いたじゃねえか』
そう私が言うと
『えっ』
という顔をしている彼に続けて私はこう言いました。
『お前・・今日・・野球を辞めますって俺に言いに来たんだろ?落ちる所まで落ちたって言うんだったもう上がるしかないじゃんか。ここからスタートすればいいじゃんか』
その後・・
彼は高校野球をやり遂げました。
リトルや中学で中心人物だった自分に別れを告げ、一から泥まみれになり這い上がっていきました。
高校野球を最後まで続ける難しさ・・
それでも這い上がっていった彼。
それぞれの選手にドラマはあります。
~年中夢球~