私のリトルでは今まで3人の女子リトルリーガーがいました。
今日はそのうちの一人の話です。
彼女は野球をするまではとても内気な子でした。
兄と弟がリトルに入団しいつもお兄ちゃんと弟に連れてこられている子でした。
野球とは無縁な子で『ぽぽちゃん』のお人形でおままごとをすることが大好きな子でした。
小学校1年の時・・
いつも通りグラウンドに『ぽぽちゃん』を持ってきた彼女に当時の監督が声を掛けました。
『野球やってみない?』
そういうタイプの子でなかった子ですから親は断ると思っていました。
それが・・
『やってみる』
とまさかの返答。
一日のことだけだろうと親は思っていたのですが・・
次の週も・・
次の週も・・
彼女は練習に参加しました。
そして・・
『リトルに入団したい』
彼女の野球人生が始まりました・・
父は
『兄弟二人が野球をしていて自分も野球をしないと家に居場所がない。会話についていけない。』
と考えたのではないだろうか・・
そんなふうに考えていました。
硬球を扱うリトルリーグ。
顔にボールが当たったら・・
あの子に野球ができるのだろうか・・
心配で心配でたまらなかったはずです。
それでも・・
いつの日からか・・
彼女の大好きなものは『ぽぽちゃん』の人形から
『坂本選手』に変わりました。
内気でおとなしい彼女は
いつの日からか活発で明るい子に変わっていました。
ある試合で・・
彼女がバッターボックスの時。。
初球を空振り。
ベンチの指導者から
『おいおい!女の子にその球は可哀そうだろ!もっと軽く投げてやれよ!』
という指導者の声。
2球目・・
フワッとしたスローボール。
見事にクリーンヒットした打球が飛んでいきました。
『ナイスバッテイィグ!』
と盛り上がるベンチ。
でも・・
ベース上の彼女はニコリともしませんでした。
次の打席・・
相手ピッチャーも今度は真剣に投げてきました。
ですがまたクリーンヒット。
試合終了後・・
『女だからって馬鹿にされて本当に腹が立つ』
彼女はそう言いました。
合宿の日・・
ウチの合宿には『限界素振り』と言って何時間もひたすらバットを振る地獄のメニューがあります。
きつくて終わった後にみな泣き出すくらいきついメニューです。
素振りの前にあるコーチが彼女のところにいって
『出来るところまでいいからがんばろう』
と声を掛けました。
『女だからと言って馬鹿にしないでください』
彼女はそう言いかえし同じメニューをやり遂げました。
その後・・
彼女は中学でソフトボールの道に進みました。
市で3位。
最後の大会の前に膝の疲労骨折。
それでも痛み止めとテーピングをしながら彼女は試合に出て最後を迎えました。
この最後の試合もリトルの練習の合間を拭って
たくさんのコーチが彼女の最後の試合を見に来てくれました。
中学卒業後・・
彼女は『高校野球に携わりたい。高校野球のマネージャーになりたい』
そう言ってプレーヤーではなくマネージャーの道へ進んでいきました。
プレーヤーの道を進むだろうと思っていた親は少し複雑な気持ちもありましたが
子供が決めたことを精いっぱい応援してあげたいと思いました。
部員140名のマネージャー。
それは彼女が思っていた以上にきついものだったと思います。
朝は暗いうちに家を出て帰りも遅い時間・・
『電車寝過ごしちゃったから迎えに来て来てくれる?』
そういう連絡も一度や二度ではありませんでした。
でも・・
毎日部員のことを楽しそうに話す彼女。
野球が好き以上に部員が好きだったのだと思います。
部員を応援している彼女を応援することが父は何より幸せでした。
そんな彼女は今年の夏に最後の『じぶん史上最高の夏』を終えました。
初戦・・ハマスタでのベンチ入り。
球場に送るまでの車で父はどうしても聞きたかったことを彼女に聞きました。
『お前さ・・本当は野球なんてやりたくなかっただろ?』
彼女は少し考えてから
『野球があって良かった。パパありがとう。ハマスタのベンチ思いっきり楽しんでくる!』
そう言って車を降りていきました。
彼女が車を降りた後・・
父は一人車で涙を流しました。
高校野球を終えた彼女はこれからも
『野球に携わりたい』
と話しています。
彼女・・
私の娘です。
今日18歳の誕生日を迎えました。
誕生日に『ぽぽちゃん』をプレゼントしたら喜んでいた10年以上前・・
今日は何をプレゼントしたらいいのか・・
これからいろんな想い出を振り替えながらプレゼントを買いに行ってきます。
~年中夢球~