もうすぐ・・
ドラフト会議ですね。
この中からプロ野球界のスターが誕生することでしょう。
ドラフトの特番を見るとどんな選手にもドラマがあるもんだと改めて思います。
厳しいプロ野球の世界。
ここから『スター』と呼ばれる選手はまた一握りです。
皆さんの野球界のスター選手は誰でしょうか?
王選手・長嶋選手・掛布選手・桑田投手・ダルビッシュ投手・・
皆さんの中にも光り輝くスター選手が心の中にいることでしょう。
彼等は【ヒーロー】とは又違う感覚の選手達であり・・
【スター】よ呼ばれる人たちなのだと思います。
今の高校3年生の年代の話です。
このチームはずば抜けて上手い選手がいたわけでも大きな選手がいたわけでもないのですが・・
ともかく勝気な気持ちのばかりが集まった選手でした。
練習試合でも負けることを嫌い・・
仲間同士のダッシュ1本でも負けることを悔しがる子達でした。
時には喧嘩をすることもありましたが
【神奈川制覇】という目的が強い強い選手でした。
23年ぶりに神奈川を制した彼等は神奈川第一代表として関東大会という舞台に進出しました。
強い気持ちを持った最上級生9人。
そのうちの一人の選手はスタメンの選手ではありませんでした。
彼らの勢いは止まらず準決勝まで駒を進めました。
僕はそのスタメンから外れた・・
最上級生の一人のその選手にベンチワークを全部任せました。
バット引きの選手
スコアを見て野手に伝える選手
第二キャッチャーなどの役割分担も全て彼に任せました。
ベンチの中でも彼はずっと大きな声で仲間に声を掛ける彼。
スコアを見て大声で野手に伝える彼の姿がありました。
迎えた準決勝。
1点負けていた状態で最終回に2点を取られ3点差となった所でタイムをかけてマウンドに行きました。
僕は基本いつも先行を取るのですがこの試合は後攻。
僕『おい・・今日、いつもと何か違うか知ってるか?』
選手達『いや・・なんすか?』
僕『今日・・裏だぞ』
選手達『あ・・ってことはサヨナラじゃないですか。よし!俺がヒーローになる!』
選手達『いや・・お前の前で俺がけりを付けて俺がヒーローになる!』
次々に選手達が口を開き出しました。
僕『3点差ならいける。これ以上は離されんなよ』
そう言ってマウンドの輪は散らばっていきました。
ベンチの彼はずっとずっと大きな声で仲間に声を張り上げていたため・・
もう声はガラガラになっていました。
最終回の裏の攻撃。
連打とフォアボールなどで同点。
尚もワンアウト2・3塁。
バッターボックスに入る選手にネクストの選手が声を掛けます。
『俺まで回せよ!』
するとバッターの選手が
『大丈夫だ!俺が決めてヒーローになる!』
とネクストの選手にそう声を掛けました。
そのバッターはフォアボールになり残念そうな笑顔で
『おい!回したんだから決めろよな!』
そうネクストの選手に声を掛けました。
息詰まる攻防は2-3に。
カウント2-3から何度もファウルで粘っている時も・・
あの彼はベンチから身を乗り出し必死な声で声援を送っているのですが・・
ガラガラな声で聞き取れないほどになっていました。
結局その選手がサヨナラヒットを放ちこのチームは関東大会準優勝という結果に終わりました。
大会が終わった後・・
ミーティングで僕はこう話しました。
『サヨナラヒットを打ったお前もヒーローだしそこまで繋いだ皆もヒーローだと思う。だけど一番のヒーローはお前だな』
そう言って・・
スタメンから外れてずっと仲間に大きな声で声を掛けていた彼の名前を言いました。
『ヒットを打ったのは確かにお前たちだけど打たせたのはコイツの声だよ』
そう言いました。
『確かに!確かに!ありがとうな!』
そう言って皆から頭をポンポン叩かれていた彼。
最初は笑顔だった彼は・・
涙に変わっていきました。
僕はこう思うのです。
スターは・・
自分自身で光を放ち手の届かないような存在なもの。
ヒーローは・・
誰かを助けたり、喜ばしたり、感動させたりすることによって光り輝くもの。
この試合のヒーローは正にこの彼でした。
この彼は高校3年間・・
無事に野球を終えたと連絡が来ました。
あきと・・
おつかれさん・・。
そして・・
ありがとう。
~年中夢球~