指導者に成り立ての頃…
僕は一から十まで指示を出す指導者でした。
『グラウンド整備をしなさい』
『昼食後は13時から練習開始な』
『フリーバッティングに入るからネットを4枚用意しといて』
全て僕が指示を出していました。
子供達は自分で考えることなく…
僕の指示通りに動いていました。
お恥ずかしい限りですが・・
僕自身この時は何の疑問もありませんでした。
チームもいい所まではいくのに勝ちきれない…
準決勝までは行けるのにその先が行けない…
そんな状態でした。
春の準決勝の時…
強豪チーム相手に3-1でリード。
回は終盤を迎えていました。
相手チームの攻撃…
ワンアウト満塁のピンチ。
僕はタイムをとりマウンドに行き内野手全員を集めてこう指示を出しました。
『ファーストとサードはホームゲッツー。二遊間はセカンドとファーストでゲッツーをとりなさい』
次のバッターの初球。
打球は三遊間の緩いゴロ。
サードの選手が左手を伸ばしてよく捕ってくれました。
サードの選手はホームに投げようとしました。
ボテボテのゴロの打球の上、体勢は崩れています。
ホームは諦めセカンドに投げたほうがいい体勢とタイミング。
『間に合わない!』
そう私は言いましたがサードの選手はホームに投げ…
しかもその球は暴投になりました。
その後チームは逆転負けをしました。
サードの選手は…
僕の指示通りにホームに投げたのです。
彼は何も悪くありません。
普段から僕が指示を1から10まで出し…
『指示待ち人間』の選手を僕が作ってしまったわけです。
普段から考える力を養えていれば…
あの打球と体勢でバックホームは間に合わないとサードの選手は自己判断出来ていたはずです。
野球というスポーツはゲーム中は選手一人一人が考えてプレーしなければなりません。
それも瞬時に。
瞬時の判断力がゲームを大きく左右します。
その瞬時の判断力は試合中だけで作れるものではありません。
普段の練習や私生活から【自ら考える力】を養っていなければ身に付かないものです。
あらゆる可能性の状況を想定して練習をする。
そのプレー一つ一つの中で子供が考えていく。
あの試合から私の考え方が変わりました。
勝てない理由も指示待ち人間を作ってしまった僕にあったわけです。
今、僕は選手にこう言います。
『ファーストとサードはホームゲッツー。二遊間はセカンドとファーストでゲッツー。ただし状況判断はお前達に任せる』
もしあの時に・・
この一言が言えるチームを作っていたら・・
あのサードの選手に申し訳ない気持ちで今もいっぱいになります。
~年中夢球~