ある選手が入団したときのお話です。
彼は他のチームから5年生の時に私のチームに入団してきました。
体型は所謂ポッチャリタイプ。
昔でいうドカベンタイプの選手でした。
体験入団の時に・・
彼は中々グラウンドに入れずにいました。
【無理しなくていいから入りたくなったら言ってな】
彼にそう声を掛けてお母様からお話しを伺いました。
『前のチームで体型の事を他の選手や監督に色々言われて野球に行けなくなってしまったんです。気持ちの弱い子で・・』
お母様は少し俯きながら続けて
『でも・・野球は好きって言うんです。野球は続けたいって・・今日の朝もがんばろうねって声を掛けたのですが・・あれでは難しそうですね・・』
そうお話しして下さいました。
グラウンドの外でどうしていいかわからないでいる彼の所に行きました。
『少し座って、話そうか』
そう言って彼を座らせてこう言いました。
『ポッチャリの体型が嫌なの?』
黙ってうなずく彼。
『なんで嫌なのかな?』
そう聞くと
『足も遅いし・・』
私と眼を合わすことなく彼はそう答えました。
相当、体型にコンプレックスを持っているのでしょう。
それを周りの人間に言われた事で自信を失くしてしまっている印象でした。
『ウチの選手、紹介まだだったよね。今、全員集めるから』
そう言って選手を全員集めました。
最初の選手が名前を言いました。
ウチのチームで一番背が小さい選手です。
僕は
『コイツ・・背が低いだろ(笑)』
と言った後にこう言いました。
『でもね、コイツはチームでバントが一番うまいんだよ』
次の選手が自己紹介をしました。
『コイツ・・』
と僕が言いかけたところで,その選手は自分から
『自分は一番やせてます!でも守備は一番うまいです!以上!』
そう笑顔で言いました。
周りも笑顔になり彼も初めて笑顔になりました。
そして・・
3番目に自己紹介した選手は体験に来た選手と同じようなポッチャリタイプの選手です。
『僕はチームで1番足が遅いです!でもホームランの数は1位です!』
と彼に向ってVサインをしました。
すると周りから・・
『いや。。体験の子の方が飛ばすんじゃね?』
『お前のホームラン王もやばくね?』
そんな声が飛び交い体験の彼も輪に入っていきました。
体型の事を気にする選手もいれば・・
気にも留めていない子もいます。
そのことを言われても負けない心の強さも持たなければいけませんし・・
体が小さければ御飯をたくさん食べる努力をしなければいけませんし・・
ポッチャリタイプで足の遅い選手は足を速くする努力をしなければなりません。
ですが、それ以上にその子だけしか持っていない所が必ずあるのではないでしょうか?
それを見つけられる指導者の眼と親の眼も大切な気がします。
~年中夢球~