リトル時代の彼はよく泣く子でした。
私に叱られ涙を流し・・
打てない時には涙を流し・・
ピッチャーとして打たれると涙を流し・・
そんな選手でした。
彼の名前は小野航平。
東大から日本ハムに入団した宮台選手のお父様が監督をされている高校で
彼は今年最後の夏を迎えます。
彼は練習ではいいバッテイングやいい守りをしていましたが・・
気が弱いところがあって、なかなか結果を出せずにいた航平。
リトル最終学年の最初の公式戦。
航平はバットを1球も振ることなく見逃し三振をして
「気持ちが弱い」
「本番に弱い」
という声が周囲からあがりました。
でも、練習では、りいい当たりをかっ飛ばすんです。
ひと冬越えた春の大会。
背番号を決めるのに、航平を一桁にするか、
監督に
「航平を使い続けてください。試合で結果を出
と頭を下げたことを今でも覚えています。
春季大会の二回戦。
0-5の劣勢で回は終盤の5回。
航平の目が覚めるような右中間のタイムリーで2点を
試合で勝ったことは、もちろん、嬉しかったのですが・・
や
親としては『泣かない』ことが『強い』というしつけをしてしまいがちです。
例えば、転んだときに
「泣くな!」
そう言ったりします。
これは
『泣かない』=『強い』
だと思います。
小さな痛みくらい涙を見せずにこらえられるのは、強さの証しであると思います。
野球に限らずスポーツでは、涙を我慢しなければいけない時も確かにあります。
ですが・・
『涙』という漢字には
『戻る』という漢字が・・
『泣く』という漢字には
『立つ』という漢字が・・
それぞれ入っています。
涙を流した後に・・
また自分に戻ればいい。
泣いた後に・・
また立ち上がればいい。
だけど泣く前の自分より強く・・
自分に戻っていく。
涙は心の浄化になる時もあります。
他人に自分の弱い面を見せ・・
涙を流すことは実は勇気がいることなのかもしれません。
試合に勝って笑って成長することもあれば・・
試合に負けたり、挫折を味わって泣いて成長することもあります。
時には涙を流すのを我慢し・・
時には我慢できずに涙を流し・・
それは両方とも『強さ』に変わっていくのだと私は思っています。
この悔しさを忘れないという覚悟の涙。
航平はたくさん涙を流した分だけ強くなって・・
今、高校野球最後の夏を迎えようとしています。
エースとしてマウンドに立ちます。
先日、練習試合の彼を観に行きました。
あの涙を流した男の子は・・
精悍な高校球児の顔になっていました。
試合が終わって監督さんがご挨拶に来ていただきました。
その後に航平も挨拶に来てくれました。
『航平・・もう泣いてないのか?』
そう私が笑顔で言うと・・
『本間コーチ!辞めて下さいよ!もう泣いてないですよ!』
そう白い歯を見せて笑顔で答えてくれた彼。
今までたくさん流した涙・・
全てはこの夏のために・・。
彼の最後は笑顔で終われるのかな。
~年中夢球~