ある卒団生のお母さんのお話です。
そのお母さんの口癖がありました。
『なんでみんなと同じことができないの』
ノックの時にエラーが多いわが子。
バッターとしては空振りが多いわが子。
試合や練習中に大声で言うことはありませんでしたが・・
練習の後にわが子の所に行き…
『なんでみんなと同じことができないの』
そう言っている姿を何度も見かけました。
『お母さん…○○は練習中に手を抜いているわけではありませんよ。一生懸命頑張っています。必ず上手になりますから』
そうお母さんにお話しさせていただいたことがあります。
でもお母さんからすると…
『みんなと一緒のことができないわが子』
にもどかしさや悔しさがあったのでしょう。
人と比べて起こるもの。
それは・・
劣等感と優越感だけです。
どちらも持つ必要のない感情です。
その記事はこちらから↓
そのお母さんは熱心な方で練習も毎週のように見学され・・
家での自主練もお手伝いしている熱心な方でした。
それでも、そのお母さんから・・
『なんでみんなと同じことができないの』
その言葉が消えることはありませんでした。
言われている子供は・・
いつも困った顔をしてうつむいたままでした。
ある日・・
その子がいつも以上にノックのボールが捕れず涙を流したことがありました。
彼も戦っていたはずなんです。
『どうして捕れないんだろう』
『どうして僕だけ・・』
そんな気持ちになっていたのかもしれません。
練習を見に来たお母さんの顔を見ると・・
肩を落としている姿がわかりました。
『お母さん・・』
そう私が声をかけると
『なんで・・みんなが出来ることを出来ないんでしょうね。家でも練習しているのに・・』
涙ぐみながら、そうお答えになったので
『しばらく私とアイツの事を一緒に見ませんか』
そうお話しさせていただきました。
ノックはまだ続いていました。
なかなか捕球出来ない彼を見てお母さんにこう言いました。
『お母さん…ノックを打つ前のノッカーへの彼の声。一番大きい声で呼ぶんですよ。聞いてみてください』
そう話すと…
お母さんはしばらく彼の声を聞いていました。
『あいつにしか出来ない声なんですよ。みんなが出来ないことをあいつは出来てるんです』
そう話しました。
ノックが終わる頃…
『お母さん…よくあいつを見ていてください。必ず一番最初にグラウンド整備を始めますから。みんなが出来ないことをあいつは出来てるんです』
そう話しました。
みんなが出来ているのにわが子が出来ない所…
親はどうしてもそこに目が行きがちになります。
ですが…
わが子にしか出来ない所も必ずあるんです。
親が何を見るか…
親がどこを見るか…
ではないでしょうか?
現にこの子はメキメキ力を伸ばし高校野球では副キャプテンを務めました。
お子さんの『今だけ』を切り取って見てはいけません。
お子さんの『一部だけ』を切り取って見てはいけません。
子供を人として成長させるためには『親の眼』も必要なのです。
~年中夢球~
こんにちは。
読みながら涙が出ました。
このお母さんと私が一緒だから…。
私もいつも思っていました。
『どうしてみんな打ってるのに打てないんだろう。』ヒットが続いているイケイケの雰囲気を息子の凡打がシラケさせてしまう…。
『どうしてあんなエラーするんだろう。』長い間野球してるのに雑にいってしまい後逸する事も…。
試合を見るのが怖くなってきていました。
この記事を読んで、息子を振り返ると
私の息子は誰とでも仲良く、トラブルを起こす事も無い。
ベンチワークも自ら進んで頑張ってる。
ベンチでも大きな声が出てる。
『打てる、打てない、守れる、守れない』
大事な事かもしれませんが、それだけではないんだな、と。
とっても大切な事を思い起こさせて頂きました。
ありがとうございました。