あの夏からもう5年の月日が流れました。
小学校から野球をやり始めたあなた・・
「野球をやりたい」
と言いだした時・・
「お当番とか大変なんだろうなあ」
「人間関係めんどくさいなあ」
正直・・そんな事を考えていました。
でもグラウンドに行くと・・
「あれ・・家でこんな笑顔見せたことないなあ」
とある日気付きました。
笑顔も・・
泣き顔も・・
悔しそうな顔も・・
それは家ではなくグラウンドでしか見られない表情でした。
中学はクラブチームに進学し
「強い高校で野球をしたい」
そう言ってあなたは強豪校と呼ばれる高i校に進学しました。
高校入学後・・
上には上がいることを思い知らされた高校1年生。
それでもあなたは持ち前の元気でがんばっていましたね。
辛い顔ひとつ見せず・・
「母ちゃん!今日もお弁当美味かったわ!ありがと!」
そう言ってくれるあなたを見て私も元気をもらっていました。
高校2年の秋・・
初めてのメンバーに選ばれたあなた。
あなたのポジションは
『三塁コーチャー』
『元気な声と的確な判断が出来る』
先生がそう言ってくれたと嬉しそうに私に話してくれましたね。
周りのお母さんからもあなたの三塁コーチは元気をもらえると言っていただいていたのですよ。
でもね・・
お母さんはちょっぴり
『試合に出ているあなた』
を見たかったのです・・
この時までは・・
最後の夏・・
あなたはメンバーに選ばれました。
試合前日に
『母ちゃん。最後の夏、俺はバットとグローブを持って野球をしていないかもしれん。でも三塁コーチャーに俺は誇りを持っとる。ベンチに入れなかったヤツの気持ちも考えて右手グルグル回すから・・よく見といてな』
こう言ってくれました。
私が思っている以上にあなたは野球に『成長』させてもらっていたのですね。
チームは勝ち進み・・
あなたが右腕をグルグル回す姿を何回も見れました。
そしてあの準々決勝・・
甲子園まであと3つ。
試合は行き詰る接戦になりました。
1-2の劣勢のまま試合は最終回へ。
最終回2アウトながらランナー2塁・・
バッターが放った打球はセンター前へ・・
3塁コーチャーのあなたは右手をグルグル回していました。
砂煙から見えた審判のジャッジは・・
『アウト!』
でした・・
あなたの「ポジション」である『コーチャーズボックス』の中で泣き崩れるあなたの姿。
審判の方に整列を促されてもなかなか立ち上がれないあなたがいました。
責任感の強いあなたは
『自分のせいで負けた』
そう思ったのでしょう。
試合終了後・・
ダッグアウトを出て球場の外に出てきた選手達。
まだ涙が止まらないあなたは他の仲間に抱きかかえられるようにして出てきましたね。
『俺のせいで負けた・・みんな本当にごめん』
そう言って泣きながら話したあなたに・・
『お前のせいで負けた試合なんか1試合もない。だけどお前のお陰で勝たせてもらった試合はたくさんある。ありがとう!』
こう言って肩を支えてくれた仲間たちがいました。
野球・・
やっていて本当に良かったね。
この高校を選んで・・
本当に良かったね。
あの夏から5年。
あなたが野球をしている姿を思い出す時・・
手にグローブとバットを持っている姿ではなく・・
右手をグルグル回すあなたの姿です。
私を『ランナーコーチャーの母』にしてくれてありがとう。
私達親子の「高校野球最後の夏」はせつなさも残ったけど・・
野球の素晴らしさを知らせてくれた夏でした。
今・・
彼は指導者への道を歩み始めました。
~年中夢球~
すみません、電車の中にも関わらず泣きそうになりました…。
うちの中2の息子も補欠です。
レギュラーメンバーではありません。
公式戦、練習試合すべてを観戦してる私としてはやっぱり試合に出て欲しい。
でも、そうですよね。
ベンチから聞こえてくる息子の声を、ベンチワークをしている息子の姿を大事にしようと思わされる内容でした。
ありがとうございました。
要は親が子供のどこをどのようにして見るか・・だと思うのです。
どの親御さんもレギュラーメンバーである我が子を見たい・・
ですが高校野球の半分以上の選手はそれが叶わず終わります。
その時に子供がどう向き合うのか・・
そのことが将来の自分に深くかかわってくるはずです。
お子さんがどんなポジションでもしっかり見守ってあげてください。