ある高校野球のマネージャーの女の子の話です。
彼女は小学校の時から兄弟と野球の大好きな父の影響で野球をやり始めました。
リトルリーグ・・
中学はソフトボールの道へ・・
高校さんからも
『ソフトボールでうちに来てください』
とお話をいただきました。
彼女は悩んで・・
悩んだ挙句・・
『私は高校野球に携わりたい』
父にそう話しました。
父は『プレーヤー』でなくなる娘を応援できるのだろうかと悩みました。
でも・・
娘が決めたことと応援することに決めました。
彼女が選んだ高校はマネージャー甲子園出場もある高校。
部員は140名を超える学校でした。
朝は部員の30分前に学校へ・・
終わりは部員が帰ってから・・
『マネージャー』は彼女が想像していたものより厳しかったのだと思います。
時々・・
電車を寝過ごしてしまい
『パパ。迎えに来て』
そういう電話もありました。
それでも・・
『今日、○○がホームラン打ったんだよ』
『今日、○○たちとご飯食べに行ってくるね』
話す内容は部員のことばかり・・
マネージャーは野球が好きなだけでは出来ないのだと思います。
部員のことを本当に好きで・・
部員にも愛されて・・
そうでなければあの厳しい生活を乗り越えることはできなかったと思います。
その彼女はこの夏高校3年になりました。
最後の夏。
初戦に行く娘を車で送りに行きました。
何度も何度も通ったこの道。
お互い忙しい父と娘はこの送りに行く車の中だけがゆっくりと話せる時間でした。
『お前・・本当は野球・・やりたくなかったんじゃないか?』
父が尋ねると
『パパ。私に野球があることを教えてくれてありがとう。野球があって本当に良かった。ハマスタのベンチ楽しんでくる』
そう笑顔で車を降りました。
父は涙を流し
『少しでも・・一日でも・・彼女に長い夏を・・』
そう願いました。
彼女の『じぶん史上最高の夏』は神奈川ベスト16で終わりました。
『部員より先に泣かない』
そう言っていた彼女は誰よりも早く涙を流しました。
それから4か月後・・
卒部式で紅白試合が行われることになりました。
彼女はずっと思い描いていた願いがありました。
彼女の学校はマネージャーがグラウンドに入ることが規則で許されていません。
『一度でいいからみんなと同じグラウンドに立ちたい』
彼女はそう願っていました。
紅白戦で彼女は『マネージャー』としてベンチでスコアをつけていました。
みんなとする最後の試合。
ベンチの彼女は笑顔が絶えませんでした。
試合も終わりに近づいたとき・・
守っている部員の一人が急に
『タイム!』
と球審に・・
周りも
『何・・どうしたの?』
という雰囲気に・・
すると内野がみんなマウンドに集まり・・
ベンチにいた彼女に全員が笑顔で
『来い!来い!』
の合図。
ベンチから出てきた彼女。
まさかの・・
伝令です。
マウンドに行き・・
みんなと何やら笑顔で話した後・・
『絶対勝つぞー』
と彼女の声がグラウンドに響きました。
『みんなと同じグラウンドに一度でいいから立ちたい』
その彼女の想いを知っていた部員からのサプライズでした。
父はその姿を見て涙が止まりませんでした。
娘をここまでがんばらせてくれる人間にしてくれてありがとう。
こういう君たちだから娘はがんばれたのだと思います。
そして・・
娘にも・・
ありがとう。
人を応援するというのは義務などではなく
心から
『応援したい』
って思えるからなのだと思います。
娘が応援したいと思った140名の部員。
その娘を応援してくれた方々。
心より感謝しています。
娘・・
無事に大学に合格しました。
~年中夢球~