みなさんのチームにもいませんか?
「ムードメーカー」
ムードメーカーとは、その場にいるだけでその場の空気・雰囲気を好転させることができる力を持っている人のことを指す。 スポーツにおいては選手としての実力とは別に持ちえる能力であり、たとえ技術で貢献する能力が無くとも戦力的なプラスを与えてくれる存在である。
調べるとこう書いてありました。
私のチームにいたある「ムードメーカー」と呼ばれていた選手の話です。
彼は試合に出ることは多い選手ではありませんでしたが、誰よりも明るく、そして野球に詳しい子でした。
よくプロ野球選手のモノマネをしたりしてみんなを笑わせたりして、いつも彼の周りには笑顔がありました
私が練習中に他の選手を叱ると
「おーい!〇〇気にすんな!次々!」
叱られた子にこんな声をかける選手でした。
こんなこともありました。
試合形式の練習の時に・・
ある子が見逃し三振を繰り返しました。
私がその子に叱って・・
次の打席で・・
2ストライクから外角に際どいボールが…
私はストライクだと思い・・
その選手を叱ろうとした時・・
「あー・・今のは際どいけどボール一個外れてるな。うんボールだな。ボール。本間コーチ、ボールですよ」
その時、キャッチャーをしてこれを言ったのがあの「ムードメーカー」の彼でした。
ピッチャーの選手に
「いいボールだったけど外れてるぞー」
と声を掛けるとピッチャーの子もその子の意図を読みとりニヤニヤしながら
「わりい!わりい!今のはボールだな!」
と返すと守りの選手もニヤニヤしながら
「ボール!ボール!次!次!次は手出せよ!」
そんな声がグラウンドに響き渡りました。
ここまでやられるともうその見逃しをした選手を叱れません(笑)
彼の言葉が…存在が…ムードを変える…
正に「ムードメーカー」でした。
練習中も試合中も誰よりも声を出しミスをした選手にもいつも温かい言葉を掛けてくれる彼を僕も頼っていました。
うちの選手は公式戦で負けると人目を憚らずに涙を流します。
この年代のチームは特にそういうチームでした。
ある大事な公式戦で逆転サヨナラ負けをした時…
涙を流す選手達…
その中であの「ムードメーカー」の彼だけは涙を流さずいつもの明るさと笑顔で
「まだまだ次があるぞ!」
「泣くな!泣くな!」
そうみんなに声を掛けていました。
この子は本当に強い子だな…
そう思っていました。
この時は…
リトルリーグは最後の公式戦に敗れた瞬間にリトルを引退することになります。
次の日から基本的にはグラウンドに姿を見せなくなります。
最後の公式戦…
彼等らしい戦いでしたが残念ながら接戦で敗れました。
号泣する選手達…
あのムードメーカーの彼だけは最後もいつも通りの明るさと笑顔で仲間に声を掛けていました。
泣き止まない彼等…
その時..
あのムードメーカーの彼が私の所にやってきました。
トレードマークの笑顔が崩れ…
彼は私にこう言いました。
「本間コーチ…すいません。笑顔で終わろうと思ったけど出来そうもありません。最後だけはみんなと一緒に泣かせてください」
そう告げた顔は涙でボロボロになっていました。
どんなに苦しい練習でも…
試合で負けても…
涙を流さなかった彼の最初で最後の涙でした。
彼に「ムードメーカー」を背負わせてしまったのかもしれない…
彼も本当は試合で負けた時に涙を流したかったのかもしれない…
そんな想いが頭をよぎりました。
その後…
彼は泣いている彼等の輪に入り仲間と一緒に涙を流しました。
その彼は高校野球までやり遂げました。
試合を観に行った時…
三塁コーチャーとして大きな声と笑顔でチームのムードを盛り上げている彼がいました。
試合に敗れ…
高校野球を終えた彼を球場の外で見つけました。
リトルのあの最後と同じように涙を流している仲間を笑顔で励ましていました。
私の姿を見つけてこちらに向かってくる彼。
リトルのあの時は「最後は泣いてもいいですか」と私に言ってきた彼は私にこう言いました。
「ずっと野球をやってこれて幸せでした。試合には出られなかったけど…みんなを盛り上げて…みんなが元気になってくれて…めちゃくちゃ楽しかったです」
彼の野球人生最後の日に涙はありませんでした。
リトルから高校野球まで彼の笑顔と言葉で何人もの選手が元気をもらったはずです。
こういう「ムードメーカー」と呼ばれる選手がいるからこそチームは明るくなります。
こういう選手がいるからこそ他の選手も明るくプレーが出来ることを忘れてはいけません。
そして…冒頭にあるように『貴重な戦力』であることは間違いありません。
~年中夢球~