少年野球~高校野球 子供を持つ親と指導者のサポーター~

~毎日マッサージを続けた母~涙を流しながらマッサージをした訳~

どんな野球選手にもドラマがある

お母さんありがとう…

プロ野球のドラフトの時の流されるあのテレビ番組。

見ているとそれぞれの家庭に…親子に…

ドラマはあるのだなあと感じます。

ですが・・例えプロ野球選手になれなくても

どの親子にもドラマはあります

台本の1ページ目だけは書かれています

主役という配役は、もちろん皆さんのお子さんです。

渡された台本には…

1ページ目に「野球を始めた日」と書かれています。

2ページ目以降は白紙…

これからの野球人生は正に「筋書きのないドラマ」です。

お母さんありがとう…

この番組を見ていてある母と子のことを思い出しました。

ある母と子のドラマ

その選手のお母さんはシングルマザーとしてお子さんを育てられていました。

体験入部に来られた彼が小学3年生の時。

台本の1ページ目・・

この母と子の『野球を始めた日』になります。

お母さんはとても野球が好きな方で・・

『私が父の仕事もやります。審判でも何でもやります!ですから入団させてください』

お母さんはこうおっしゃいました。

『いいんですよ。やれることをやってもらうだけでこっちは有り難いですから』

そうお話しました。

入団してから試合はもちろんお母様は練習もほぼ毎週グラウンドに。

平日もフルに働き土日は朝早くから野球へ・・

本当は体はとてもキツかったのだと思います。

それでもそのお母さんはとても明るくいつも笑顔を絶やさないお母さんでした。

あたしがキャッチボール出来たらいいんですけどね・・

子供は少し練習態度に問題がある所があり・・

グラウンドの外に出されることも1度や2度ではありませんでした。

その姿をお母さんが・・

『本当にすみません・・家でもよく言っておきます』

とお母さん。

『グラウンドの事はグラウンドでですから。家では何も話さなくていいと思いますよ』

と話すと

『私が怒っても、最近、反抗ばかりで・・』

といつも明るいお母様の顔から笑顔が消えました。

『あたしがキャッチボールでも出来たらいいんですけどね』

そう言ってお母さんは無理に笑顔を作っていました。

マッサ-ジの時間が母と子の会話する時間になりました

翌週・・

お母さんの腕にアザが・・

話を聞くと子供とキャッチボールをしたらしいんですね。

『キャッチボールって難しいですね。遠慮しないで投げていいよ!って言ったらこんなんなっちゃいました』

お母さんはそう言ってまた悲しい笑顔を作りました。

『お母さん。キャッチボールは危なすぎます。その気持ちだけでもう子供に伝わっていると思いますよ』

そう話したのですが

『私に父親の役目はやっぱり出来ないんですかね・・あの子の野球ために何かしたいんです』

と・・

『お母さん。食事とマッサージについてお勉強されたらどうですか?母が子供に一番出来るサポートで勉強のしがいもありますよ』

そう話すと

『食事とマッサージ・・ありがとうございます。やってみます!』

お母さんに少し笑顔が戻りました。

子供の方はというと・・

地肩が強い事もありピッチャーとして頭角を表し始めていました。

ピッチャーをやり出してからなのか・・

お母さんのマッサージが原因なのかはわかりませんでしたが

練習態度も以前とは別人のようになっていました。

『肩や肘の痛いところはないか?』

と聞くと

『毎日、お母さんがマッサージしてくれているので大丈夫です』

ニッコリ笑ってそう言いました。

その後も彼は活躍を続けチームのエースにまでなっていきました。

お母さんのマッサージは毎日だったそうです。

お母さんも疲れていたはずなのに・・

『マッサージの時間が私にとっては一番あの子と話せる時間なんですよ。勝った時は【今日はナイピーだったね】なんて言いながら色々なことをあの子と話すんです。仕事の疲れなんて忘れちゃいますよ』

お母さんは私にこう笑顔で話してくれました。

大事な公式戦で・・

ある大切な公式戦の時でした。

世界大会に繋がる一番大きい大会の試合。

相手は強豪でしたが最近のチーム状況を考えると『勝てる』と皆が信じていました。

彼だけでなく全員気合が入っていました。

先発ピッチャーはもちろん彼です。

ですが・・

先頭バッターにフォアボール・・

続くバッターにもフォアボール・・

デッドボール・・

ヒット・・

ヒット・・

フォアボール・・

エラー・・

そして・・

フォアボール。

これ以上この試合で彼が立ち直ることが難しいと判断し私はここでピッチャーを交代しました。

ワンアウトも取れずに彼はマウンドを下りました。

試合にも敗れ・・

試合後・・

彼は人目をはばからずに大泣きをしていました。

マッサージなんかしなくていい

その日の夜・・

いつも通りにマッサージをしようとする母に

『マッサージなんかしなくていい。マッサージしてもらうほど投げていない』

そう言って彼は涙を流していたそうです。

『これで終わりじゃないでしょ。また次があるから』

そう言いながら母の眼からも涙が溢れだしたそうです。

ですが・・

涙を流しても母の手は止まることがありませんでした。

お母さんの手には心がありました

卒団式の時・・

彼は皆の前でこう話しました。

『お母さん。僕が怪我なく野球が出来たのはお母さんのマッサージのお陰です。仕事で疲れているのにお母さん本当にありがとう』

母は言葉にならずただただ涙を流していました。

言葉にならない母を彼を見て

彼はそのお母さんの手を取り今まで自分の体を支えてきてくれた母の手をしっかり握りました。

掌(たなごころ)・・

手の心と言う意味です。

マッサージをするお母さんの手には我が子を思う『心』が入っていたはずです。

今度は・・

その後・・

彼は中学も高校もピッチャーとして活躍をしました。

お母さんのマッサージは高校野球を終える日まで毎日続いたそうです。

高校を卒業した彼は・・

整体師としての道を歩み始めました。

整体の勉強をしている彼。

お母さんをよくマッサージするそうです。

彼がマッサージをした最初の日・・

お母様は涙を流したそうです。

その涙を見て子供も涙を流したそうです。

あの日の悔し涙とは違った涙だったはずです。

お母さんが手の心である『掌』で想いを込めてしてくれたように彼も同じように想いを込めたのでしょう。

それは誰よりも彼がきっとわかっていることでしょう。

この母と子の野球のドラマは終わりましたが

親子のドラマはまだまだ続くはずです。

~年中夢球~

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野球少年を持つ親御さんと指導者の皆様へ元気を送り続ける[年中夢球]です。 神奈川野球雑誌『ОNEDREAM』に連載中。

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