先日、ある方と食事をした時にこんなお話を聞きました。
「最後の夏…ダイビングキャッチをしたけど、あと15センチ届かなかったんですよ。その15センチの練習が足りなかったんですよ」
たった15センチ。
されど15センチ。
その15センチが勝ち負けを左右し、時には一生背負いこんでしまう時もある。
スタートダッシュの練習をもっとしていたら届いたかもしれない15センチ。
打球の判断力をもっと養っていれば届いたかもしれない15センチ。
そういう紙一重の所で勝敗がついてしまうのが野球です。
毎日、素振りを50回増やしていれば、打てたかもしれない。
毎日、もっと食事を食べていれば、打球が外野の頭を越えていたかもしれない。
毎日、もっと走り込んでいたら、バッターを抑えられたかもしれない。
結果が出たときに、そんなことを感じてしまうのかもしれません。
868本のホームランを打った世界の王選手は、868本「しか」ホームランを打てなかったと言ってバットを置きました。
ソフトボールの上野選手は「今日も満足する練習が出来なかった」と思い1日が終わるそうです。
「打撃の天才」と言われた広島の前田選手は、ヒットを打った後でも一塁ベース上で首をかしげるシーンが多くありました。
結局…
本人の中で満足をすることがないのでしょうね。
我々からすると868本「も」ホームランを打ったと思うのに王選手からしてみれば868本「しか」という考え方になるわけです。
「も」なのか「しか」なのか…
毎日の素振りも同じですよね。
300回「も」振ったと考えるのか300回「しか」振らなかったと考えるのか…
もうダメだと考える自分とまだまだ振れると考える自分がいる。
まだまだ振れるという自分が勝ってバットを振り続ける。
もうダメだと思った時からバットを振ることに大きな意味があると思うのです。
そういう紙一重の気持ちが後々に大きな差を生むはずです。
がんばった「つもり」では積もりません。
がんばったつもりの素振りは『すぶり』ではなく素振り『そぶり』です。
毎日毎日、真剣にこれでもかと思って練習をしていても、エラーをしてしまうし、ここぞの打席で打てないこともあります。
だからこそ、毎日の練習に妥協をせずに、「も」ではなく「しか」という考えが必要なのだと思うのです。
努力をせずに結果が出なければ後悔しか残りません。
努力をして結果が出なくても後悔は残ってしまうかもしれません。
ですが、そこにはこれからの野球人生や人生に役立つ「経験」という貴重なものを手に入れられるはずです。
~年中夢球~