少年野球~高校野球 野球少年の親と指導者のブログ

少年野球 僕はメンタルなんか強くないのに・・

先日、個別のご相談を頂き中学校3年生の選手とお母様にお会いしました。

『野球を嫌がっていないのに何故か練習前や練習中に吐いてしまう。病院に行っても原因はわからない』

高校野球に向けて心配なので・・

というご相談でした。

メンタルが強い我が子

お母様のお話を伺っていると・・

・小中学校キャプテン

・メンタルが強い

・しっかり者でみんなからの信頼が厚い

・野球が大好き

簡単にまとめるとこんな感じの内容でした。

だからこそ・・

何故、吐いてしまうのかわからなくて困っているというご相談でした。

お母さんの話を聞いている彼はニコニコとしていて・・

いかにも【いい子】という印象を受けました。

しかし・・

しばらく話を聞いていると私の中で『あれ?』と思い始めてきました。

お母様がお子さんに対して同意を求める聞き方がとても多いのです。

『メンタル強いもんね?』

『野球大好きだもんね?』

こんな感じに・・。

お子さんはこれらの聞き方にニコニコしながら頷いているだけ。

これは質問ではなく・・

そう答えさせようとする尋問です。

お母様に

『ちょっとお子さんと二人でお話させていただいてもよろしいでしょうか?』

とお願いをしてお子さんと私の二人だけになりました。

お母様が部屋を出て行く時に・・

お子さんがフッと力が抜けている姿が見えました。

二人きりになって・・

『メンタルってさ・・一番大事なことがあるんだけど知ってる?』

そう彼に聞くと

『いや・・わからないです』

と彼は答えてくれました。

『緊張しているのに緊張していないとか・・自分に嘘をつくこと。だから、正直に話してね。』

そう話しました。

『いきなりで悪いんだけどさ・・自分でメンタル強いって思う?』

彼は少しびっくりした顔になって

『あ・・いや・・』

そう言ってしばらく黙り込みました。

しばらくの沈黙の後・・

『弱いと思います・・』

そう一言だけつぶやきました。

『君はさ・・すごく優しくていい子だから・・演じてきちゃったんじゃないかな?お母さんが言うメンタルが強い自分。しっかりしなきゃいけない自分。お母さんのことが大好きだから余計にそう思っちゃったんじゃないかな?』

そう彼に話しました。

『自分はメンタルも強くないし、しっかりもしていないし、キャプテンだって本当に辛くて辛くて仕方なかったんです。でも、お母さんが言えばいうほどそうならなきゃいけないと思ったし、お母さんが周りの人にもそうやって言うから周りの人にもそう思われて・・』

話しているうちに彼の眼から涙がこぼれ落ちました。

そして・・

こう続けてくれました。

『でも本間さん・・一つだけ本当のことがあるんです。野球が大好きっていうのは本当なんです』

そう私の眼を見て話してくれました。

何気ない大人の一言で・・

お母様を呼び三人で又、話し合いました。

今度はお母様が涙を流し・・

『ごめんね・・ごめんね・・』

そうお子さんに謝っていました。

お母様も悪気はなかったんですよね。

でも・・

自分でも知らないうちに我が子を型にはめてしまっていたのだと思います。

メンタルが強い我が子・・に。

しっかりしている我が子・・に。

それに応えようとしているうちに体と心のバランスが取れなくなってしまったお子さん。

『ウチの子メンタル強いんです』

こんな言葉をよく耳にします。

メンタルの資格を持っている私から言わせていただけると

そんなに簡単なものではないんです。

もちろんメンタルが強い子もいます。

中には彼のように『メンタルが強い子を演じている選手』もいます。

またその逆もあります。

チャンスに打てなかった選手に

『お前、本当にメンタル弱いな』

と指導者に言われ

メンタルが弱くない選手が大人によって

『メンタルが弱い選手』を創り上げられてしまうこともあります。

イップスも同じです。

特に優しくてまじめな選手にこのパターンは多くあります。

~年中夢球~

この記事を書いた人
野球少年を持つ親御さんと指導者の皆様へ元気を送り続ける[年中夢球]です。 神奈川野球雑誌『ОNEDREAM』に連載中。